DUVET

愛するものについて

Blue

砂は冷え切った手にぬくもりを伝え、

波の音に耳をすませるたび壊れそうになる。

夜の海に輝きはなく、ただ、遠くの明滅。

 

長いあいだそこにいた。

なにかを待っていたわけではないけれど、

あなたがそこにあらわれた。

あなたが笑い、それからずっと、それだけだった。

 

柔らかく目を細め、頬より白い歯を見せた。

オレンジ色の空、褪せたフェンス、透明のライター、

重たい水色の扉。鮮やかさは私をくたびれさせ、

それがあなたのやりかただった。

感情を形容できる言葉なんてない。

それらはいつも輪郭だけをなでて去っていく。

許してもいい、許されなくてもいい、

くりかえすうちに私はなにかを手放していた。

 

愛することが意味を失っていく、

抱きしめ合うたび、光のような痛みが胸に流れた。

わたしはあと何度、こんなことを繰り返すのだろう。

 

夜明け前の青さにつつまれながら目を閉じる。

ずっと喧騒にいたような耳鳴り。カーテンが揺れる。

眠る頬、あなたの、

それからじわりと喉が痺れて、少しだけ泣いた。